憧れではなく戦略的に会社を利用してみませんか。Ⅴ

~ 法人経営のメリット お金のメリット② ~

所得分散により節税ができます。

 現在の日本の所得税の税率は、所得が多くなればなるほど税率が高くなる超過累進税率となっています。

 つまり、事業所得や給与所得などが多くなり、一定額を超えるとその超えた金額について高い税率が適用され、さらに次の一定額を超えるとその超えた金額についてさらに高い税率が適用され、所得税の負担がうなぎ上りに増える税率となっています。
 この超過累進税率による高税率の適用を回避するためには、家族などへ給与を支払って個人事業主の課税所得を分散することが必要となります。

 実際には、個人事業主の事業を手伝っている家族(事業専従者)へ給与を支払うことはできますが、その給与は労働(時間を基準に判断する)の対価であり、あまり働いていないときなどは多くの給与を支払うことができないので、所得分散が効果的に行われず、超過累進税率による高税率の適用を回避することができません。

 また、個人事業主から給与の支払いを受ける事業専従者は、他の者から給与の支払いを受けることや自ら事業を行うことができないなどの制約もあります。

 そこで、個人事業を法人にすると。
家族を法人の役員に就任させて、法人から家族に給与または役員報酬を支払います。

 この役員報酬は、労働を基準として支払われるものではなく、役員という特殊な職務の対価として支払われるので、それほど働いていなくても重要な職務を遂行していれば、高額な役員報酬を支払うことができ、所得分散が効果的に行われ、超過累進税率による高税率の適用を回避することができます。

 具体的に計算すると。
1人で給与1,000万円を支給するときの所得税額は、

【給与収入1000万円の所得税の計算】
課税所得=給与収入-給与所得控除-所得控除
    =1,000万円-220万円-38万円
    =742万円
所得税 =課税所得×税率
    =7,420,000円×23%-636,000円
    =1,070,600円
総 額 =1,070,600円×1人
    =1,070,600円

となります。
 その金額を2人に分散して、1人あたり給与500万円を支給するときの1人あたりの所得税は、

【給与収入500万円の所得税の計算】
課税所得=給与収入-給与所得控除-所得控除
    =500万円-154万円-38万円
    =308万円
所得税 =課税所得×税率
    =3,080,000円×10%-97,500円
    =210,500円
総 額 =210,500円×2人
    =421,000円

となります。
 そして、所得税額の差額は、

【分散なしと分散ありの所得税の差額】
差 額=1,070,600円-421,000円
   =649,000円

になります。

 このように所得税の超過累進税率による高税率の負担を回避することにより所得税の節税ができます。

欠損金の繰越期間が9年間と長くなります。

 青色申告をしている個人事業主は、事業で赤字が生じたとき、その赤字を翌年以降に繰り越すことができます。これを欠損金の繰越控除といい、この繰越期間は、赤字が生じた年の翌年以降3年間となっています。

 そして、赤字が生じた年の翌年以降3年間の所得の合計額が、繰越欠損金より少なく相殺できなかった繰越欠損金は、4年目以降に繰り越すことはできず、全て切り捨てとなります。

 そこで、個人事業を法人にすると。
法人も同様に欠損金の繰越控除制度があります。

 しかし、法人の繰越期間は9年間となっており、個人事業に比べて繰越期間が長いので、欠損金を有効に利用することができます。
 そして、この欠損金の繰越控除は、一定の期間における所得分散でもあり、一定の期間における給与所得控除の有効利用でもあります。

 具体的に計算すると。
1年間に1000万円の利益が生じる年があり、1年間に給与を1000万円支給したときの給与にかかる所得税は、

【法人の利益の計算】
利 益=収入-経費-給与
   =3000万円-2000万円-1000万円
   =0円
【経営者の所得税の計算】
課税所得=給与収入-給与所得控除-所得控除
    =1000万円-220万円-38万円
    =742万円
所得税 =課税所得×税率
    =7,420,000円×23%-636,000円
    =1,070,600円

となります。
 これを前年に500万円の給与を支払い、前年に500万円の繰越欠損金を生じさせて2年間で所得を分散し平準化させたときの前年の給与にかかる所得税は、

【法人の前年の利益の計算】
利 益=収入-経費-給与
   =1000万円-1000万円-500万円
   =△500円
   =繰越欠損金500万円
【経営者の所得税の計算】
課税所得=給与収入-給与所得控除-所得控除
    =500万円-154万円-38万円
    =308万円
所得税 =課税所得×税率
    =3,080,000円×10%-97,500円
    =210,500円

となります。
 そして、その年の利益1000万円と繰越欠損金を相殺させて、残った利益の500万円について500万円の給与を支払ったときの給与にかかる所得税は、

【法人の利益の計算】
利 益=収入-経費-給与
   =2000万円-1000万円-500万円
   =500円
相 殺=利益-繰越決算
   =500万円-500万円
   =0円
【経営者の所得税の計算】
課税所得=給与収入-給与所得控除-所得控除
    =500万円-154万円-38万円
    =308万円
所得税 =課税所得×税率
    =3,080,000円×10%-97,500円
    =210,500円

となります。
 そして、所得税の総額の差額は、

【1年間と2年間の総額の差額】
差 額=1,070,600円×1年-210,500円×2年
   =1,070,600円-421,000円
   =649,600円

になります。
 このように2年間で所得分散すると超過累進税率の高税率の適用を回避でき、支払う所得税が少なくなります。

 ただし、この方法は、事前に利益の増減が予想できて、欠損金の対策ができる場合に限られます。