憧れではなく戦略的に会社を利用してみませんか。Ⅹ

~ 法人経営のデメリット お金のデメリット ~

赤字でも法人府民税と法人市民税の均等割を支払わなければならない。

 事業を長く続けていくと、業績が好調で黒字決算のときもあれば、業績が悪く赤字決算のときもあります。

 個人事業主は、業績が悪く赤字決算で課税所得もゼロのときは、所得税などの税金の負担はなく、税金を納める必要がありません。
 しかし、法人は、業績が悪く赤字決算のときでも、法人府民税と法人市民税の均等割を納めなければなりません。

 その理由は、この法人府民税と法人市民税の均等割りは、法人の利益について課税される税金ではなく、その区域内で法人の事業所が存在するという事実によって課税される税金だからです。

 その結果、利益がゼロやマイナスであっても、事業所が存在すれば税金を納めなくてはならず。その負担は、法人府民税で年間2万円、法人市民税で年間5万円もしくは6万円となっています。

健康保険や厚生年金保険の加入により社会保険料が増加します。

 個人事業主の社会保険への加入要件は、サービス業や理容美容業を除いて常時5人以上の従業員を使用する個人事業主に限られており、それほかは個人事業主は任意加入となっているので、ほとんどの個人事業主は社会保険に加入していません。
 また、社会保険に加入していても従業員のみの加入のため個人事業主自身は、加入する必要がありません。

 しかし、法人は社会保険への加入が強制されており、役員や社員に関係なく全員が社会保険に加入しなければなりません。
 そして、法人が社会保険に加入すると次の負担が増加します。

 まず、従業員に対する負担の増加として、従業員の健康保険と厚生年金保険の保険料の半額を法人が負担しなければなりません。ただし、個人事業主で従業員が社会保険に加入しているときは、同様の負担となります。

 次に、経営者自身の増加分として、国民健康保険の保険料は世帯を基準として計算され、一世帯での年間負担額の上限が、約60万円前後と定められていますが、健康保険は夫婦が同じ法人から給与をもらっていても世帯による上限額の基準はなく、健康保険料は各人で計算されるので、経営者世帯の負担増加が考えられます。
 それから、国民年金保険の保険料は月に一人あたり約1万7千円ぐらいですが、厚生年金保険の保険料は給与の約18%と負担が増加します。

会社設立などの登記費用が発生します。

 個人事業を始めるときは、特別の許認可を必要とする場合を除き、それほど費用を必要とせず個人事業をいつでも始められます。

 しかし、法人として事業を始めるときは、必ず法務局において登記をしなければならず、この法人の設立に費用を必要とします。まず、定款認証を行うために公証人の手数料約5万円(別途4万円の収入印紙が必要な時もあります)が必要となります。その後、法務局への申請のために登録免許税15万円(資本金1000万円のとき)が必要となります。
 そして、法人の設立後も、法人の商号変更や本店所在地の移転などで、登記事項を変更するとき費用が必要になります。また役員の任意満了に伴う役員変更などの登記事項の変更は、頻度も多く、その都度費用が必要となります。

 また、その登記事項の変更などが遅れると過料などの罰則が科せられることもあります。

自動車保険や銀行手数料などの費用が高くなります。

 事業活動において通常の費用で、その使用者や所有者が、個人事業主と法人とで費用の金額が異なるものがあります。

 その代表的なものとしてNTTの電話料があります。個人用の住宅用回線より法人用の事務用回線の方が、タウンページ掲載などの特典はありますが、基本料金(回線使用料)が割高になっています。
 また、自動車保険も業務で自動車を頻繁に使用すると事故を起こすリスクが高くなるので、法人で契約すると保険料が割高になります。

 それから、銀行等の手数料などもサービスに若干の違いがあり、比較は難しいですが、割高になっていたりします。

最低税率の違いにより税金が増加します。

 個人事業主が法人を設立して、その法人から経営者へ給与や役員報酬を支給すれば、経営者は給与所得控除の利用や所得分散による節税効果を受けられますが、給与の支給額を間違えれば、次のような負担が増加します。

 はじめに、給与所得控除の利用による節税効果を確認すると。法人税の計算方法は、法人の利益を基に計算します。

【法人税の計算】
利 益=収入-経費-給与
法人税=利益×税率

 また、給与についての経営者の所得税の計算方法は、給与収入を基に計算します。

【給与収入者の所得税の計算】
給与所得=給与収入-給与所得控除
課税所得=給与所得-所得控除
所得税 =課税所得×税率

 そして、法人と経営者を同一体と仮定して、法人を設立したときの経営者の課税所得の計算方法と個人事業主の課税所得の計算方法を比較すると。

 法人の経営者の課税所得の計算方法には、給与所得控除の適用があり、課税所得を減額するので、所得税の節税ができることがわかります。

【同一体の課税所得の計算】
課税所得=(収入-経費)-給与所得控除-所得控除

【個人事業主の所得税の計算】
課税所得=事業収入-必要経費-所得控除

 しかし、実際には税金の計算方法として、法人と経営者の税金を同一体として計算することできず、法人も経営者も別々に法人税や所得税を計算します。

 そこで、法人の利益を給与として適正に支給できれば、給与所得控除による節税が有効となりますが、法人の利益と給与とに大きな差が生ずれば、次のような税金が増加します。
 給与の額が、収入から経費を差し引いた額より多ければ、法人は赤字となり欠損金を有効利用できますが、経営者は超過累進税率による高い税率により多くの所得税の負担をしなければなりません。
 また、給与の額が、収入から経費を差し引いた額より少なければ、経営者は超過累進税率による低い税率により所得税の負担は少なくなりますが、法人は法人税等を負担しなければなりません。

 その結果、所得税の税率と法人の税率の差額を負担しなければなりません。

【法人の最低税率の計算】
税 目 =法人税+地方法人税+法人府民税+法人市民税+事業税+地方法人特別税
最低税率=15.00%+0.66%+0.48%+1.45%+3.40%+1.46%
    =約22.46%

会計処理などの事務負担や費用が増加します。

 個人事業主の経理処理は、売上などの収入と必要経費の支出を集計し、その集計に基づき申告書を作成するといった程度でよく、それほどの厳密性を求められていません。

 しかし、法人は、銀行や取引先などの債権者や株主から会社の経営状況をあらわした決算書等の開示を求められたりします。そして、その決算書等は、過去の業績や他社の業績と比較検討しやすくするために客観的で正確かつ厳密な基準により作成しなければならないので、その作成のために手間と費用負担が増加します。

 また、決算や税務申告においても個人事業主にはなかった手続きなどが必要になり、そのために法人では専門家のサポートを受けることが多くなり、そのための費用増加が考えられます。